bricoleur
photo_Kosuke Okahara
text
敷地は京都東山三条。東大路通を東に入ったこのエリアは、いまのところ大規模な開発を免れ、昔ながらの町家や商店街が残る。近年は観光客、とりわけインバウンドの増加に伴い、その立地の良さから、町家を改修したゲストハウスが軒を連ねる。その中の1つの長屋を料理家であるクライアントが人を招き料理をつくって振る舞うための自宅に改修した。
まず、クライアントから改修は可能な限りDIYで行いたいという要望があった。
そこで建築家としては、彼らの要望をまとめ完成像を提示すること、DIYで作りやすいディテールを提案すること、設備工事など法律で無資格者が行えない工事の手配を行った。
改修は、繰り返しリフォームされることで失われていた町屋の風情を再び呼び戻すために、既存の仕上を撤去して本来の状態に戻した上で、訪れた人たちを招き入れやすいよう、路地に面した空間に大きなキッチンカウンターを据えることにして、外国からの来客も多いため、床は土間とし下足で入れるようにした。
工事を進める過程を観察しながら技術的に難しそうな工事は、専門業者に発注することも視野に入れていたが、彼らが思った以上に高度な技術を持っていることが徐々に分かり、工事は滞ることなく順調に進んだ。
結果的に、1.2㎥の土間モルタルとキッチン天板の特殊左官仕上を左官屋に依頼した以外は、解体から配筋・断熱・木下地・石こうボード・パテ・塗装・建具・造作家具工事と、しまいにエアコン設置にいたるまで、DIYでやってしまった。
その様子を見てハイデガーが「住まうことは建てること」であると言っていたのを思い出した。彼らは彼らのスキルとホームセンターで入手出来る建材だけを用いて、彼らの生活を最大限豊かにする理想の住居を作り上げた。
最後に町との関わりについて。周辺には林立するゲストハウスの利用者と昔からの商店街がうまく交流している。そこへ大きなキッチンカウンターを持つ長屋が現れる。ここにゲストハウスの利用者が出入りして、町のキッチンになることが、クライアントの夢でもある。こうした開かれた長屋のライフスタイルが町と交歓し、町に活気をもたらす一助になることを願う。
I designed not just a house but also how to renovate. The clients did it self this house almost all.