食住一体

コロナ禍、グローバリズムや新自由主義経済の危うさが剔抉され、身近なコミュニティや経済活動が見直され始めた。 かつて人は住まいの傍らで働き、食料を生産してきた。しかし日本においても高度経済成長を通して住居、職場、農場は切り離された。

21世紀に入り、都心回帰による「職住近接」、情報技術の発達などにより「職住一体」は推進された。しかし食料生産の場は相変わらず遠く、どんな農薬を使い、どれだけエネルギーを消費(あるいは浪費)して、手元に届いているか想像できず、今回のような非常事態では供給が不安定になりうる。

そこでコロナ後の在り方として、食料生産の場を手の届く範囲に取り戻すことで、非日常時のリスク回避や、日常では安全な食料自給、生活の質の向上、近隣コミュニティの再生を図れると考えた。本プロジェクトでは敷地に住宅と畑を慎重に並べ、住まうことと食料生産が相互作用する「食住一体」を提示した。

建築主は敷地の徒歩圏にマンションを所有され、ここでは畑と非日常の生活を楽しむセカンドハウスを要望された。最終的に住宅部分は恒久的な住まいが可能な面積となったが、畑を主軸にした計画と非日常的な空間構成は維持されている。

敷地は間口5m奥行15mの東西に長いうなぎの寝床であり、一般的な配置計画として東西のいずれかに住宅を集約し、残地を畑とすると、住宅と畑、人と植物の間に距離を生じる懸念があったため、大きな架構の下、北側は屋根と壁があるから住宅、南側はそれが無いから畑とした曖昧な区分で、人と植物のヒエラルキーを排することに考慮した。

1階にはダイニングキッチンとイベントスペースを兼ねた空間、バスルームを配した。全面サッシで開放されるが、床高さを450mm下げることでプライバシーを確保し、これは同時に室内の視線と植物を物理距離以上に近づける。   バスルームは非日常の象徴としてかなり広く、それは一部が育苗のためのサンルームを兼ね、バスタブに浸かると西側に大きく開き小高い森を望めるが、その残り湯は畑に散水される。

2階は対照的にハイサイドライトに絞り、落ち着いた寝室と子供のプレイルーム、なにより膨大な蔵書の書斎として主人は読書に耽る。

屋根は景観条例により切妻屋根が推奨されたが、周辺に伝統的な住宅はすでに一軒も無く、そこに直截的な歴史建造物の模倣は違和感があり、多雨でゲリラ豪雨も起こる日本の気象条件から勾配屋根の選択は必然であったが、太陽光発電や雨水利用の合理化を考えれば、南に向かった片流れ屋根こそ相応しい。

植物のように今後住人が暮らしを変化し続け洗練させいつかこの住宅は極相に到達する。

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